細美は違う場所へ行った。
ご存知の通り細美武士は、ELLEGARDENで当時のメロコアロックシーンの頂点まで上り詰めた人間だ。
ワタシも大好きだよELLEGARDEN。
そして、休止後に始めたプロジェクトが『the HIATUS』である。
ところで、細美武士が、ELLEGARDENの休止後に始めたプロジェクト『the HIATUS』については難しくてよく分からない。
あまりノレない。
わかりづらい。
細美にはエルレみたいな音楽でないと嫌だというメロコアキッズの声をよく耳にする。
今作の発売前も、ハイエイタスの新作発表なのに『エルレはまだか?』『エルレの方がいい』などの声を聞く。
クソかっこいいよなこれ。
ここくらいまでは、まだエルレファンも付いてきたと思うけど、3枚目のアルバムからは、もうハイエイタスの細美は違う場所へ行ったと思った方も多いだろう。
今回に限らず、ハイエイタスの新作がリリースされる度に、昔に戻るような音楽を細美信者の皆様は期待しているのではないだろうか。
MONOEYESではメロコアキッズも納得するような曲を書いていたが、やはり細美はメロコアという呪縛がつきまとうものか。
なぜにスコットマーフィーなのか。
新作リードトラック
いかががだろうか?
細美がスーツだぜ。
きっちりネクタイだ。
Tシャツに短パンじゃないんだよ。
率直な感想は、前作で示したこれが『ハイエイタスの音楽』というモノを、さらに昇華させてきていると感じる。
ハイエイタスはエルレとは打って変わった実験的なプロジェクトだ。
エルレがメロコアなら、ハイエイタスはオルタナだろう。
前作よりその音楽アプローチはポストロックに通じるものも垣間見えるようになったと感じる。
エルレはストレートなバンドマン細美のメッセージであり、ハイエイタスは表現者としての挑戦だろう。
今回のこの曲に限らず、エルレにはなかったピアノやストリングス、アコースティックギターを用いることもあれば、
ミニマルな曲を作ったりしているし、エルレのようなストレートな音作りだけでなく空間系のエフェクターも多く使われるし。
ライブにおいてはオーケストラとの共演もしている。
このように、いわゆるロックバンド編成だけでは形にすることのできない表現が多数見受けられる。
公式サイトでは「音楽やアート、表現者たちのプロジェクト」と表記されているし、
エルレとはそもそもの、活動コンセプト自体が全く違うわけだ。
個人的には、元ミッシェルのウエノとtoeの柏倉と一緒にやるなんて、それだけで歓喜であって、
どちらかと言えば音楽も含めて、ハイエイタスの方が好みである。
このハイエイタスを受け入れるかどうかはリスナーの自由だが、
『エルレのようなストレートなメロコアが細美武士』と、いつまでも決めつけるのは如何なものか。
細美だって人間だ。
挑戦したいことなんて山ほどあるだろう。
ハイエイタスは「音楽やアート、表現者たちのプロジェクト」なのである。
それは細美武士が描くキャンパスが広がったということだ。
ギターと詞と、その声で、いわゆるバンドで収まっていたエルレとはそもそもが違うのである。
ハイエイタスでの細美は表現者なのである。
だって、ハイエイタスの細美はギターを持たない時だってある。
表現者。細美武士。
これからもしかしたらエルレが再開する時があるのかもしれない。
それは今の所誰にもわからない。
再開に歓喜するリスナーも多いだろう。
ぼくも純粋に嬉しく思うよ。
でもそこにいる細美は、もう昔のエルレガーデンの細美ではない。
再開したとしても、曲調がエルレだとしても、昔のエルレではない。
バンドマンの細美は一度死んだんだから。
バンドマン細美武士を演じる表現者の細美武士がそこにいることだろう。
休止以降、細美の中に蓄積された様々な経験を捨てて、またあの時の状態に戻るなんてことは不可能だろうし、
それは細美以外のメンバーにも言えることだ。
だとしたらもしエルレが戻ってきても、細美のその人生からにじみ出る、
その時の細美の表現する音を素直に楽しむべきだろう。
バンドのフロントマンを超えて表現者となったアーティストは数多くいる。
アルバムごとに変化してリスナーを困らせる者もいるし、
毎回同じような曲を量産する表現者もいるし、
それぞれに対して、その表現方法を否定してくる者もいる。
ワタシは正直どっちでもいい。
才能を持った表現者ならなおさら、様々なアイディアを持っているだろうし、
自分の音楽に頑固にこだわるものだろう。
細美は、間違いなく才能がある表現者である。
それも、アイディアが溢れ出す方の表現者だ。
昔の細美を超えていくのは、他の誰でもなく、細美自身の音楽なのだろう。
そもそも人間なんて常に変化する生き物であり、細美のような才能に溢れている人間であればおさらのこと。
もうレスポールをかき鳴らしながらエモいメロディを歌う細美はいないのである。
それも含めて細美武士を受け入れるのがファンではないだろうか。
これからも細美武士の音楽を聴き続けたいと思う。